これからの時代の

大学と社会の共創を

考える

武蔵野美術大学1/M(イチエム)は、多様で多彩な本学の取り組みや教育・研究成果を伝え、
社会とのつながりや共創の可能性を育む場を目指しています。

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EVENT

【lecture】公開講座「トップデザインセミナー」第1回

公開講座「トップデザインセミナー」は、平成24年4月に開設した武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジにて行われる、
「これからの日本のデザイン」を共通テーマとした講座です。

昨年度は、デザイン分野および新しい事業を推進するリーダーをお呼びして全8回開催されました。参加した方々から
の貴重なご質問やご意見もいただきつつ、あらためてデザインの未来をみつめる場として有意義な時間が形成されました。

3年目となる平成26年度は「これからの地域のデザイン」「これからの日本のデザイン教育」をサブテーマに地域デザイン
のトップ、教育分野に広く関わる方を登壇者としてお招きする予定です。

■平成26年度全体テーマ「これからの日本のデザイン」

デザインを軸にしている企業のリーダー及び地域形成のトップリーダーに、世界そしてアジアの中の日本として、
技術優国の日本として、感性秀国の日本としての「これからの日本のデザイン」をテーマにお話しいただきます。

講師:
梅原 真 氏|デザイナー/本学客員教授

高知市生まれ。1980年、梅原デザイン事務所設立。
一次産業にデザインをかけ合わせる方程式で、日本の風景を残したい。
「土佐一本釣り・藁焼きたたき」、4kmの砂浜に Tシャツをひらひらさせる「砂浜美術館」、
四万十川流域で販売するものを古新聞で包む「しまんと新聞ばっぐ」などをプロデュース。
デザインは、やわらかアタマで楽しくモンダイを解決するソフトであると考える。「図工・デ」を提案中!

日時:
平成26年6月6日(金)18:30-20:00
※終了後にご参加自由の交流会を予定しています。

会場:
武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ
(東京都港区赤坂9丁目7番1号ミッドタウン・タワー5階 東京ミッドタウン・デザインハブ内)
会場は同フロアのインターナショナル・デザイン・リエゾンセンター、交流会は武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジで行います。

受講料:
1,000円(当日受付にて承ります)
※武蔵野美術大学の学生は、当日学生証を提示すると無料になります。

定員:
100名(申込先着順)

申込方法:
E-mailにてお申し込みください。
「氏名(フリガナ)・電話番号・E-mailアドレス・本学学生は所属学科名・学年」を記入して下記アドレスまでお申し込みください。
*必ず件名に「第1回公開講座 受講希望」と明記ください。

申込先アドレス(武蔵野美術大学 企画部研究支援センター):
E-mail  kenkyu@musabi.ac.jp

主催:
武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ

運営:
武蔵野美術大学企画部研究支援センター

協力:
東京ミッドタウン・デザインハブ

後援:
港区

【Archive】

<Agenda>
1. これからの日本のデザイン教育
2. これからの地域のデザイン

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◯これからの日本のデザイン教育

現在の造形教育の最初は「図工」だが、「図工」とは図画と工作の複合なのであって、デザインの要素は欠落してしまっている。
デザイン教育という観点から、この事実は極めて重要な問題である。

日本を変える方法としては、北欧では一般的なデザイン思考教育を実施するため、最初の造形教育科目である「図工」を「図工・デ」に変えることだ。

例えば、図工では「ケーキを作りましょう」として、もっぱら「ケーキ」を作らせる。
そこにデザイン思考が入ると、「ケーキ屋さんを作りましょう」となり、「ケーキ」そのものだけでなく、「お店」「内装」「材料」「包装」「費用」「従業員」「衣装」「セールスプロモーション」など、幅広い視野が必然的に求められる。

デザインとは、「-」を「-」と決めず、思考と試行錯誤によって「+」に変えるプロセスを指す。
こうした授業を通して、「-」を「+」に変える、あるいは「-」を「+」にも勝る「-」にするという工程に快感を覚えさせることで、デザイン思考を養っていくことができるのではないか。

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◯これからの地域のデザイン

・十和村の振興計画
十和村の地域振興計画書の表紙デザインの仕事。
この計画書には計画をまとめると同時に、村民に周知する目的があるが、内容に手出しはできない。
そこで、表紙デザインの観点から「十和村総合振興計画」という名前から「十和ものさし」と変えることを進言し実行したことで、見向きもしなかった村民に興味を持たせることができた。

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・株式会社四万十ドラマ
地域の産物を全国に売る会社。
ただ産物を売るだけでは弱いし売れないので、地域の最大の魅力である「水」に焦点を当てた本を出版した。
その際、執筆者は東京の人間に頼むがギャランティは報酬相当の地産の鮎、デザインや出版は高知県在住の人間が行うということにこだわった。
これは、「東京から見た高知を編集する」というアプローチを「高知から見た東京を編集する」に変えたかったからであり、それにより地産のものにも都会に負けないパワーがあるんだという自信につなげるためである。
現在も、株式会社四万十ドラマは様々な事業に取り組んでいる。

・四万十のひのき
当時、なかなか売れずに困っていた四万十の木材。
売れないなら、売れる製品に自分たちで作ることを提案した。
当初はアピールしてもわずかな企業のみから連絡が来る程度であったが、一般の小売業者に流せるように改良を重ね、今では多くの人の手に渡っている。

・しまんと紅茶
農業の自由化、セイロンティーの普及などを理由に、40年前に製造中止となった紅茶。
茶の原材料を静岡に輸出するだけであったが、自分たちで紅茶を作って売れるようにした。
当然、たくさんの競合会社があるが、その差別化にはネーミングがポイントとなった。
「40年前の紅茶を復刻」→「40年前の味で新発売」
今では、高知生産の独特な香りと味の紅茶として、確立している。

 

ローカルでは、予算の都合などでテレビCMに頼ることはできない。
商品と消費者のタッチポイントが最重要であり、これを堅牢なものにするための仕掛けを考えるのがデザイナーの仕事である。

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<まとめ>
生産とは、デザインの作業であるアイデアによってタッチポイントの面積を広げ、図工の作業である制作によって質の良いものを提供・提案するのである。
地域デザインからでも、デザイン教育の必要性は充分に感じることができる。

新しい価値を生み出すために求められるべき造形教育とは、「図工」ではなく「図工・デ」なのではないだろうか。

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