【lecture】WEEKEND 学長トーク vol.3 - 今、だからムサビ。 –
2015年度より武蔵野美術大学学長に就任した長澤忠徳教授が、六本木にあるデザイン・ラウンジを拠点に「WEEKEND 学長トーク」を開催します。
美術大学の誤解されがちなところや、現在推進しているグローバル教育についてなど、受験生や保護者はもちろん、一般の方にも是非聞いてもらいたい「美大の本当の姿」を学長自らが語ります。
■vol.3 「今、だからムサビ。」
1929年の創立以来、教養を備え、人格的にも優れた造形各分野の専門家養成を掲げるムサビ。
現在では6万人以上の卒業生を輩出し、日本のクリエイティブ産業を支えているといっても過言ではありません。
Vol.1,2は美術大学全般がテーマでしたが、vol.3ではとことんムサビについて語ります。
講 師:
長澤 忠徳 氏|武蔵野美術大学学長
日 時:
平成27年8月7日(金)18:30-20:30
会 場:
武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ
(東京都港区赤坂9丁目7番1号ミッドタウン・タワー5階 東京ミッドタウン・デザインハブ内)
受講料:
無料
定 員:
65名(申込先着順)
主 催:
武蔵野美術大学法人企画グループ
【Archive】
<Agenda>
1. 何が「問題」かすら「わからない問題」を解くには…「心の音」を聞け!
2. 帝国美術学校から86年、日本を代表する私立美術系総合大学へ
3. 生きるをつくる、つくるを生きる…校友6万5千名
4. 世界のムサビへ…これまでも、これからも「グローバル人材育成」に挑む
5. ムサビが育む「身体性の覚醒」へ…文明と文化の調和ある持続のために
1. 何が「問題」かすら「わからない問題」を解くには…「心の音」を聞け!
テクノロジーの発展は世界を平均化させる。
便利さを求めるのは大変結構なことだが、逆に未来の我々に対して思考停止させる一面もある。
本来、問題には答えが見えないものが多く存在しているはずだが、答えの見えるものばかりを解いてきてしまったため、
思考停止させる社会を生み出してしまった。
これこそが大問題なのである。
「わからないこと」を「わかろう」とする姿勢、「堅い意志と柔らかい頭脳」を育むのが武蔵野美術大学の使命である。
つまり、「心の音( = will)」に耳を貸し、それを表現という形で具体的にアウトプットする訓練をしているのである。
我々の文明・社会によって、我々の見地を削いでしまう現象がある。
好きなもの好きなもの、嫌いなもの、受かる、受からない。
その判断基準は、果たして「心の声」から来るものだろうか?
私たちが目を向けなければならないのは、「何を問題視し向き合っていきたいのか」ではないだろうか。
2. 帝国美術学校から86年、日本を代表する私立美術系総合大学へ
武蔵野美術大学が目指すところは、単純なる芸術の専門家ではなく、教養を兼ね備えた人材の育成にある。
それは、創立当時から不変の理念である。
美術教育と寛容な武蔵野美術大学の校風によって、学生は「身体性」と「自在性」を手に入れる(あるいは覚醒する)。
科学が進歩する社会の中で、「身体性」の立場から「自在」にものを考えることができる存在になることができるのだ。
3. 生きるをつくる、つくるを生きる…校友6万5千名
武蔵野美術大学の卒業生は、美術・芸術のみならず、多種多様な形でクリエイティブな活動をしている。
また、国境にとらわれず、海外で活躍している卒業生も少なくない。
これは、新たに道を目指そうとする者にとって、サポートする人材を発見するためのネットワークにもなり得る。
武蔵野美術大学、多摩美術大学の卒業生は、年間約1500人。つまり、形はどうあれ、それだけの数を社会に輩出しているのである。
戦後、日本は高度経済成長により発展した。だが、文化的にはどうだろう。
今こそ、この約1500人の力が必要なのではないだろうか。
4. 世界のムサビへ…これまでも、これからも「グローバル人材育成」に挑む
グローバルが注目を浴びる時代、グローバルとはそもそも何だろう。
留学すればグローバル?英語ができればグローバル?
グローバルとは、ただ世界に出ていくことではなく、自分の立っているところはどこなのかを知ることなのではなかろうか。
そのために英語力は必要不可欠のツールであるは間違いない。
今求められている能力は、世界共通言語の英語というフォームに、自由に書き込みができるのかということである。
美術系大学だから英語は学ばなくてもいいというのは見当違いだ。
なぜなら、ポートフォリオもバイリンガルで作る必要がある時代だからである。
5. ムサビが育む「身体性の覚醒」へ…文明と文化の調和ある持続のために
文化は文明の抑止力だろうか?
文明は文化の抑止力だろうか?
どちらも、同等に働いていなければならない。
「調和」なくして成り立たないのである。
「調和」には「身体性の覚醒」が必要であり、それは新時代を切り開いていく力になる。
「身体性の覚醒」とは、前述の「寛容さ」「自在性」を兼ね備えることである。
では、その力をするために何をすればいいのか?
とにかく、活発な課外活動をすることだ。
課外活動とはつまり、授業、単位、未来といった、皆が同様に悩み考える枠組みから逸脱した「余計なもの」をすることだ。
この「余計なもの」をすることによって、自信には今まで無かった総合的な力を得ることができるのである。
そしてそれは、やがてくる「いつか」に繋がる可能性もあるのである。
美大生が造形力を持っていることはわかった。
だが、それだけでは物足りない。
それは自分が一番よくわかっているはずだ。
「普通の表現力+何か」を持っていれば、1人で2人分、あるいは何人分もの力を持っていることになる。
これこそが今を生き抜く力なのである。
武蔵野美術大学の特筆すべき特徴は、「信じる力を養う学校である」ということだ。
あの遥かなる水平線に立てる!と信じて…挑むことを恐れない!
「今、だからムサビ」なのだ。
We are all different, we are all special.